上海欧貝薩企業諮詢管理有限公司 董事長 内田信氏 インタビュー
経済危機以降、内需を喚起して成長を続ける中国市場は、日本企業にとっても無視できない存在となっています。
ただ、商習慣の違いから中国での販売活動に苦労している企業が多いのも事実。そうした中で、タオバオ(淘宝网)というネットのショッピングサイトが注目を集めています。
本日は、日系中国現地法人のCOO、CFOを歴任し、自らもタオバオ(淘宝网)でベビー用品を販売する上海オブザベーションコンサルティング有限公司 董事長の内田信氏に、タオバオによる中国進出の可能性ついてお話を伺いました。
中国のネットショッピング状況

中国のネット人口は2008年末の時点で298百万人、普及率は22.6%に達しています。また、この内28%がECを経験しています。
利用者の属性としては、大都市圏に住み、高学歴、高所得者層であるほどネットの利用率、ECの経験率共に高くなる傾向があるようです。
日本のECの売れ筋商品としては、書籍、食料品、CD・DVDが人気ですが、中国では、衣類を筆頭に、書籍、化粧品、日用品などが売れ筋であるという特徴があります。
タオバオについて

中国のEC市場における特徴は何といってもC2C(個人間商取引)による取引がEC全体の9割と大多数を占めており、C2Cの取引が実質B2C(企業から個人への小売取引)を兼ねているということでしょう。
そのC2Cサービスの中でも2008年の取引総額が約1.2兆円に達するタオバオ(淘宝网)は、中国におけるEC全体の8割と圧倒的なシェアを占めており、中国のECを語る上で無視できない存在です。2003年ごろはeBayが一人勝ちの状態でしたが、ここ数年でタオバオの利用が急速に高まり、現在では事実上の業界標準といえる位置まで存在感を高めてきました。(2004年にはNo1になっています。)
タオバオとは、企業間取引サイトとして日本でも有名なアリババグループ(阿里巴巴集团)のタオバオ(淘宝网)社が運営している、個人間取引サイトです。日本のオークションサイトに近く、出品者、購入者共に会員登録をしてIDを取得してからタオバオのサイト上で取引を行うことになります。
本来は個人間の取引のためのサイトですが、実態は様々な中小企業が出店しており、日本の商品も多く出品されています。
タオバオには出品者、購入者の消費者心理をうまく捉えた工夫が随所に見られます。
例えば、販売代金の回収は中国人同士でも苦労すると言われていますが、タオバオではそのことに考慮して、安心して決済ができるアリペイ(支付宝)という決済システムを提供しています。アリペイとはアリペイ社が一旦代金を預かり、買い手が無事に商品を受け取って問題がないことを確認した後、アリペイ社から売り手に代金を支払うという決済システムです。アリペイ社もアリババグループの一企業でありアリババが責任を持って決済を仲介していることが、出品者と購入者双方の安心につながっています。なお、この決済はコンビニ決済も可能なので、中国在住の日本人でも利用することができます。
この他にも購入者の心理を考慮した機能が数多く用意されており、購入の敷居を下げています。出品者にとっても、容易に出品できる工夫がされていることと、個人間取引のため税負担が軽いことが出品数の増加に拍車をかけているようです。
このように購入者と出品者が集まる仕掛けと、安全な取引を担保していることが、取引の活性化を促す要因となっているようです。
日系企業にとってのタオバオのメリット

日系の企業にとってはタオバオを使うことで、中国市場へ進出するハードルを下げることができるでしょう。
中国では通常、流通ルートに商品を卸そうとしても、よほどのブランドがない限り受け入れてもらえず、また多額の中間マージンを取られて苦労をするケースが多いそうです。しかし、タオバオであれば誰でも会員登録ができ、こうした制約なく出品することが可能です。すでに1億人近くいるタオバオ会員へ向けて、最低限のコストでアプローチできることは大きな魅力といえるでしょう。
その他にも、拠点間の物流網構築のコストや店舗の出店コスト、人員管理コストなどを抑えることができるのも、進出初期段階では大きなメリットといえます。
こうした参入の容易さと、初期費用が低いことから、タオバオでまず進出し、市場ニーズを把握していくという、テストマーケティング的な使い方として、タオバオは非常に適しているといえるでしょう。
タオバオを使った中国展開
上海で生活し、自らもベビー用品をタオバオで販売している内田氏は、日本商品の安全、品質、センスは、中国の富裕層を中心に評価が高いと実感しているそうです。特にベビー用品や、食品、化粧品、衣服などは、日本の商品を指名買いする人も目立っています。
このような日本商品のニーズの高まりに加え、タオバオによって中国市場参入の敷居が低くなったことで、今後は今まで以上に中国へ進出する日系企業が増えてくるのではないでしょうか。
また、すでに中国で製造を行っているメーカーにとっても製造拠点としてだけでなく、販売拠点を確立できる、大きなチャンスであると捉えるべきでしょう。
タオバオはオンライン上で取引を完結することができますが、内田氏の経験によると、可能であれば小規模であっても店舗を構え、商品を手に取ることができるスペースを設けたほうが良いとのこと。
これは現地の購入者は、売り手と顔を合わせ、現物を確認してから買う傾向が強いためだそうです。内田氏のタオバオの店舗では、ベビー用品という安全性が求められる商品を扱っていることもあってか、わざわざ上海の店舗に直接来店して購入する人も多いそう。内陸部の富裕層がわざわざ上海のお店に来店し、まとめてお買い上げいただくこともあるそうです。
こうした対面の対応も含め、タオバオの店舗を運営していくには、販売後の問合せ、物流業者との連絡といった業務が必要になってきます。こうしたことは可能な限り現地のスタッフに任せ、日本のスタッフは財務を中心に経営管理の役割に徹した方が、うまく行く確率が高まるのではないでしょうか。
また、タオバオの掲載だけでなく、現地向けに中国語で自社サイトを立ち上げ、ブランドイメージの訴求や、顧客への教育などといった高い視点からのプラニングも求められています。
競争の激しい中国の市場で、短期間で7-8割のシェアを獲得することは難しいかもしれませんが、タオバオと自社サイトをベースにテストマーケティングを行い、それを元に進出計画を練ることで、中長期的に1-2割のシェアを獲得することは、十分に可能ではないでしょうか。
そのためには、現地の商慣習を理解し、ニーズを的確に把握することが必要です。タオバオを皮切りに進出することで、コストとリスクを抑え、効率の良い事業展開が可能になるのではないでしょうか。
(以上、編集部まとめ)
内田信 氏プロフィール
上海欧貝薩企業諮詢管理有限公司 董事長
学習院大学卒、1983年 大成建設入社。1995年 ジョンソンエンドジョンソンメディカル部門の経営管理部門責任者。1998年 渡米 UCLA Anderson School入学。2000年 トランスコスモス韓国法人社長、中国法人及び香港法人の役員。その後、上海日系コンサル会社での人事制度設計コンサル事業の立上げ、インデックスアジアパシフィックCFOを経て、2008年7月より上海に戻り上海オブザベーションコンサルティング有限会社(中文社名:上海欧貝薩企業諮詢管理有限公司)を設立。M&A、不動産投資のアドバイザリーを行うと共に、自らもタオバオでベビー用品を販売している。
企業サイト:
http://sites.google.com/site/shoconsulting/
ブログ:
http://blog.goo.ne.jp/muchida3527
タオバオショップ:
http://shop36385758.taobao.com/