本日は、安徽省にて起業された、安徽開源軟件有限公司 総経理の中尾貴光氏に、中尾氏が考える『中国IT業界の魅力』についてお話を伺いました。
安徽開源軟件有限公司は、Linux、Androidなどに代表されるオープンソースの導入コンサルティング、トレーニング事業、開発(受託開発含め)を行う企業として、本年2009年7月に設立したばかり。中尾氏は、3月まで、ターボリナックス上海の総経理をされていました。
今後5年間で120万人のオープンソース系技術者が不足、市場としての中国IT業界

日本にとって、今までの中国は生産拠点としての役割が大きかったですが、最近では、他業界同様に生産拠点から市場としても注目されはじめています。特にこれから5年以内に、オープンソース系技術者が中国国内で120万人不足するとの予想もでています。
その大きな兆しが早くもでてきています
【ポイント1】
WindowsからリナックスOSへのシフト
2001年12月より、WTOに加盟している中国ですが、海外の調査会社によると、中国での89%のOSが違法コピー、中国政府機関での調査でも47%が違法コピーとの調査結果が出ております。そのため有料であるWindowsの購入よりも、コストが抑えられるリナックスOSへのシフトする企業も多いそう。また、米国産であるWindowsを、政府の基本システムに利用するのは、国防の観点からも中国にとっては脅威であり、政府関係部門もリナックスへの移行や、リナックスをベースにした国産OSの開発にも力を入れています。
【ポイント2】
3Gへの設備投資が2009年上半期だけで800億元(≒1兆1,131億円)
中国のモバイル業界の規模は2008年で306.5億元(≒4,246.6億円)規模であり2009年も成長率は30%と言われています。そして、それを支える3Gの設備投資費用は2009年上半期だけで800億元(≒1兆1,131億円)にも達したと報告されています。この3Gの設備はほとんどがオープンソースが利用されています。
【ポイント3】
中国移動と聯通は3G携帯に、携帯電話向けOS「Android」を導入
AndroidはGoogleが主導で開発したLinuxベースの携帯電話向けOS。
今後、中国の主流となる3G携帯電話の基本OSになるかもしれません。
また、3G携帯電話は、中国内陸部・農村の人たちが家電を購入するときに助成金が出る制度・家電下郷の対象となる製品にも含まれています。つまり、いままで携帯電話を持ったことがなかった6億人の人々が、初めて購入する携帯電話は3G携帯ということケースも多くなるでしょう。3Gの普及でモバイルコンテンツやモバイルECの市場もますます大きくなります。
【ポイント4】
中国スタンダードな規格
中国はその市場の広さと、中国が主導を握れる知的財産権の規格作りに注力しています。中国産OS、中国発インターネット企業、中国産CPU「龍芯」、中国版ブルーレイ「CBHD」と、中国スタンダードが世界基準を変える可能性も大きいですね。中国経済圏である日本は、世界戦略をすすめつつも、中国独自の規格も意識して取り入れていく必要があるかもしれません。
日系開発会社や日本人エンジニアにとって中国やアジアはまだまだ未開拓な市場

中尾氏によると
「日本企業は、これまでコスト削減目的で中国にオフショア開発拠点を作ってきました。しかし、経済発展も著しく、また技術者の給料は、上海や北京などでは欧米系企業の給料水準が高く、人件費は基本的に上昇しています(昨年の経済危機で、上げどまりは見せているものの)。
さらに、日本から完全なアウトソース移行ができていないケースが多く、結果的にコスト削減にはつながってない企業も多いとおもいます」
そのほか、チームワークの体制についても
「日本人と中国人では異なります。
日本人は、各自が分業して受けた仕事の接続部分も各自が意識して調和を取りますが、
中国人は、境界線はきっちりとわけますので、接続部分はプロジェクトマネージャーの仕事です。」
日本から完全なアウトソースができない理由は、やはり日本独特の仕事の進め方。ア・ウンの呼吸は日本から出たら通用しないとおもったほうがよさそう。そして、国際チームを取り仕切れるSEの存在が、これからは、ますます不可欠になっていきそうですね。
いまから中国で働く日本人へのアドバイスをください!
「突然、中国で仕事をするのは心配とは思いますが、Windows系の開発は大体日本と同じですし、技術面での仕事のすすめかたもオープンアーキテクチャーをつかってすすめるので、それほど国が変わっても苦労されないと思います。
また、オープンソースの技術レベルは日本のほうが3年くらい進んでいると思いますので、日本人技術者としての価値を活かすなら、いまかもしれません。と申しますのも、中国人の知識や技術への習得意欲はとても強いので、日本がオープンソース分野でも追いつかれてしまうのは、遠い未来ではないと思います。」とのこと。
中国では、沿岸部の大都市を中心に、内陸部を拠点に置く開発会社にオフショアするようになってきましたが、日本もいつか中国の大都市のオフショア先になってしまうこともないとは限りません。
「せっかく中国に来て、中国人技術者と一緒に働くなら、日本のやり方を押し付けるのではなく、中国人技術者の仕事の進め方を、管理者として取り仕切れるように努力し、また言語の習得も是非してください。」
と最後のアドバイスを頂きました。
中尾さんの安徽省起業ストーリー

安徽開源軟件有限公司は、Linux、Androidなどに代表されるオープンソースの導入コンサルティング、トレーニング事業、開発(受託開発含め)を行う企業として、本年2009年7月に設立したばかり。中尾さんが進めるオープンソースの導入コンサルティングの大きな強みは、オープンソースをベースにすることで、メーカーに左右されないコスト削減が実現できる点(“メーカー非依存”)。
「現状のIT導入にはビジネスに適さないシステムの導入、業務に対して過剰設備の導入が相次いでおり、 中小企業庁の統計によるとシステムを導入した企業の7割が何らかの不満を持っていますが、メーカー非依存という立場を利用すれば、 業務に真に求められるシステムを導入できます」とのこと。
また、急速にビジネスの現場に浸透してきたオープンソースは需要が見込まれており、特にLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHPのそれぞれの頭文字)と呼ばれる技術の技術者育成も同社のメイン事業の1つ。LAMPは、企業のWebサー バー、メールサーバー、データベースサーバーにとどまらず、様々に応用されています。
ところで中尾さん、なぜ地盤のある上海から安徽に移動して起業されたんですか?
「前述させて頂きましたが、今、中国のITの開発拠点は内陸部に移っています。また、沿岸部の都市に進出するなら、大手外資の豊富な投資資金や営業力とパワー勝負になってしまいます。しかし”内陸で成功させ中国全土戦略”というモデルなら、研究開発に時間も資金もゆったりと投資できます。
安徽省は上海まで3時間半の、上海を中心とする長江デルタ経済圏の中にあるので、人件費やランニングコストが安い安徽に拠点を置きながら、お客様のいらっしゃる上海には月に2回営業や訪問させていただくことで、近くて安いオフショア開発も実現できます。
また、数ある地方都市の中で、わざわざ安徽省を選んだのは、政府自身が外資の誘致に積極的で、IT系企業へのインキュベーション体制が整っていたからです。」
中尾さんの今後の計画は?

「もちろん将来上場も目指したいと思っています。また、私のライフワークと考えている『次世代の子供たちへ − 世界とつながるコドモネット −』を実現したいと思っています。」
コドモネットとは中国の貧困村の子供達に1人1台パソコンを使えるようにしたいという中尾さんの思いから生まれたプロジェクト。提供されたパソコンとSNSを使って世界中の子供が、絵を書いたり歌を歌ったりコミュニケーションができるようにしていく。
もちろん言語の壁はバイリンガルプログラムが取り払い、貧富の差も、地域の差もなく世界192ヶ国の小学生がすべて参加できる巨大なインターネットの空間にしていきたいなど構想は膨らんでいる。
ありがとうございました。
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