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【2008年11月05日】
<第4回目>ストレスの種類と正体をつかむ






ストレスの種類と正体をつかむ



世の中にはストレスに強い人と弱い人がいる。ある人にとっては非常に耐え難いストレスフルな出来事も、ある人にとっては全くストレスにはならずに、逆に楽しめる出来事であったりする。ストレスは個人によって全くばらばらな反応を引き起こし、その強弱も千差万別なのは、誰もが納得する。

同じ個人でも、あるカテゴリーのストレスには強いのだが、別の種類のストレスには滅法弱いこともある。つまり、どんなストレッサー(ストレスフルな出来事)にも、いつでも強い人間はありえないのである。本書では職場での日常的なストレッサーへの具体的な対処法と、日頃のメンタルタフネスの向上策を考えていきたい。

欧米では、ストレスとその対処法や職場でのマネジメントについての研究は日本よりはるか以前から学問として成立し、医学界、産業界から注目され、改善への現実的な施策がとられてきた。

あるシンクタンクの2002年の調査結果が新聞に出ていたが、ストレスという用語は認知度で外来語とは堂々第1位にランクされ、外来語の王様となっている。次に、こどもから大人まで毎日付き合わざるを得ない、この「ストレス」という言葉の語源にふれてみたい。




ストレスは三段階で進行する



もともとストレスという単語は物理学用語や機械工学の世界でつかわれていたらしい。ちなみに定義を辞典などで調べてみると、「外からの力に対する物質の歪み」とある。ストレスは原因となる刺激である「ストレス因」、これは英語では「ストレッサー」ともいうが、この「ストレッサー」の刺激を受けてゆがんでしまっている状態が「ストレス」であり、より性格には「ストレス状態」という表現が使われている。

たとえば左の手のひらを右手の人差し指で押してみよう。軽く押しているうちは快感もあるかもしれないが、次第に強く押していけば苦痛になる。この場合、ストレス因は右手の人差し指であり、手の平がおされて歪曲し、痛みを感じている状態がストレスであり、ストレス反応である。

カナダの高名な生理学者、ハンス・セリエ博士は1936年、権威ある自然科学誌「ネイチャー Nature」の中で、医学的見地からみた「ストレス」に関する論文を世界ではじめて発表した。セリエ博士は実験代の動物に対して、寒暖、薬物、物理的な痛み、餌を与えない、などのさまざまな有害ストレッサーを加えた。すると、どのストレッサーにも一様に共通した反応があることを突き止めた。それらは呼吸や心拍数、血圧の増加、筋肉の緊張、胃腸での潰瘍の発生、リンパ節の変化などの反応である。さらに、血中のホルモンの一種であるアドレナリンが増加することもつきとめ、これらが「ストレスの正体」であると推論した。

これを動物から人間に置き換えて、たとえばストレッサーが失業とか離婚とか、騒音とかそれぞれ異なっても、ストレスという共通の状態に導くのは同じであり、心身にさまざまな症状、たとえば心筋梗塞や脳溢血、胃潰瘍などの心身症を発生させるとセリエ博士は推論したのである。

セリエ博士は、もともと人間は外部からストレッサーを受けると血圧が上昇して、筋肉は緊張し血液中の糖分が増加し、瞳孔が開き、発汗し、いつでも戦ったり、ダッシュして逃げ出す態勢になったりするのが本来の姿であるとした。しかし現代の論理観からは「戦う」ことは許されないことであると理解してしまい、このジレンマからも心身の病が導き出されているのではないかとも推論した。

このような、ストレスがかかった直後の反応だけではなく、セリエ博士は長期的にストレスが繰り返された場合のストレス反応を3つステージに分けて説明している。

まず、第一反応期であるが、これは「警告反応期」と呼ばれており、全身でストレスを感知して積極的に対処するか、または回避するか、などの反応を示す時期である。このときには全身が緊張している。

次に第二期であるが、これは、「抵抗期」と呼ばれている。警告反応期に起きた肉体的な緊張の状態はストレッサーがなくなれば回復に向かうが、このストレッサーが継続すると、肉体的な緊張状態は警戒態勢を保ったままで第一の反応期の状態が回復しないようになってしまい、胃潰瘍や高血圧などのリスクが出てくる。

さらにこの状態が続くと、第三期と呼ばれる「疲はい期」になってしまう。これまでに適度に獲得された抵抗力も萎縮を始めて、ストレス関連の疾患が発生し始める。セリエ博士の動物実験では多くの動物が死亡してしまったのだ。これはそのまま人間にもあてはまると推論ができるとしたこの論文は、画期的な論文として当時、世界的に評価されたのである。




悪いストレスと良いストレスの違い



ストレスはすべて悪者ではない。だれもが多かれ少なかれ、ストレスを乗り越えて成長してきている。ストレスが成長へのスパイスであることは振り返れば実感として理解できるはずである。それでは、ストレスが当面その人にとって良いストレスになるのか、苦痛を伴うストレスになるのかの境はいったいどこにあるのであろうか。

職場を例にとるならば、一つはそのストレスの発生へ予測が立てられるかどうかという基準である。もう一つはそのストレスがコントロール可能な範囲かどうかということだろう。

いま、中高年に大きなストレスとなっているのは突然のリストラや年功序列賃金の崩壊である。以前はほとんどの企業で年齢とともに漸増していく賃金体系が基本であった。一律に右上がりでなくてもたとえば50代をピークにして段々下がってしまう賃金体系にせよ、事前にある程度予想が可能であったわけだ。しかしいまやこのような賃金体系は少数派になりつつある。

最近は実績による評価や売り上げの結果などに給与の20%から40%もリンクしてしまう実績や能力主義を導入する企業が相次いでいる。

2003年5月に発表された「りそなグループ」の夏のボーナスの支給凍結や、2004年9月に発表された「UFJ銀行」の行員のボーナスの8割カットなどはこれらの銀行員のみならず多くの国民に同情を通り越してストレスを与えたに違いない。ボーナスカットは日本人経営者の単純で一律的なワンパターン思考に思えてならない。

財務の短期的改善の陰で、メンタルヘルスの悪化という数倍のコストがかかってくるかもしれないことをトップは忘れてはいけない。給与を売り上げなどの実績によって大きく変化させては、生活費にも支障をきたす月もでてくる。家計の収入の予測ができなくなることは本人のみならず家族全員の大きなストレスになる。

年功序列の崩壊は、相対的に給与が高くても可処分所得が少ない中高年を直撃する。そして生活や教育費の負担が大きい中高年を直撃するだけで若手社員に影響がないかと思うと、とんでもない。2004年に行われたあるシンクタンクの調査では20代の若手もこの年功序列賃金の大きな崩壊に不安を持ち、この傾向を評価していないのである。

社員能力主義は正しい方向と思ってはいるものの、上司が部下を正当に評価することなど果たして可能なのかどうか疑わしくおもっているという調査結果も多く出ている。




→第5回のご案内(11/19UP予定)
テーマ:ストレスからくる「うつ」の症状と対処法
by 株式会社ライフバランスマネジメント 渡部 卓

うつ病はだれでもかかりうる病気であり、ましてやこの複雑でペースの速い現代社会ではうつ状態になるような人こそが正常であり、何事も無い様に毎日を元気一杯で送れる人はよほど恵まれた少数派であるといえる。逆説的な言い方ではあるが、毎日100%近くハッピーな人はある意味では精神的にかなり鈍感な人なのかもしれないのだ。


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【 連載予定のタイトル 】

<初回>09/17UP
対談①《組織の海外進出:過渡期の中国とメンタルヘルス》


<第2回>
対談②《海外赴任者のストレス耐性:陥りやすい傾向》


<第3回>
対談③《海外赴任者のストレス耐性:柔軟性の重要さ》


<第4回>
《ストレスの種類と正体をつかむ》


<第5回>
《ストレスからくる「うつ」の症状と対処法》


<第6回>
《閉じられた世界と「心」の3つの状態》


<第7回>
《ネットで自己カウンセリングができるサイト:メンタフダイアリー》


<第8回>
《駐在員をめぐる「目に見えない」リスクと進出企業本社》


<第9回>
《中国駐在員のストレス:文字通り「冗談ではない」事例》


<第10回>
《専門医による渡航前コーチングとは》


<第11回>
《メンタルタフネスが人生を切り拓く》


NEXT!
<第12回>3/26UP予定
《スピード社会のメンタルタフネス》






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