日銀の次期総裁は日本経済を立て直せるか 政府が植田和男氏の起用案

日銀の次期総裁は日本経済を立て直せるか 政府が植田和男氏の起用案

岸田文雄首相率いる日本政府は14日、日本銀行(中央銀行)の新総裁に植田和男氏を起用する人事案を示した。新総裁には難題が待ち受けている。

政府発表の最新統計によると、日本経済が新型コロナウイルスのパンデミックから回復するペースは、予想よりはるかに遅くなっている。

同時に、物価は過去40年以上で最も急速に上昇している。

こうした状況で学者の植田氏は、世界第3位の経済大国を立て直すため、何ができるだろうか。

国会で日銀の次期総裁に承認されれば、植田氏は経済成長の鈍化と1981年以来最高のインフレ率の両方に対処することになる。

14日発表の公式統計では、日本経済は2022年10~12月期に0.6%拡大した。2%成長という予想は大幅に下回った。

一方、12月のデータによれば、コア消費者物価は前年比4%上昇した。日銀の目標の2倍だった。

専門家らは日銀の次期総裁について、弱い経済成長に悪影響を及ぼさずにインフレ抑制のための金利引き上げを実施するのに苦労するだろうとしている。

その主な理由として、経済の力強さよりもウクライナでの戦争などの外的要因によって、国内の物価が押し上げられていることを指摘している。

ムーディーズ・アナリティックスのステファン・アングリック氏は、「日本で現在起きている悪いインフレに対処するために政策を引き締めようとすると、良いインフレを起こすための努力を後退させる危険性がある」とBBCに話した。

日銀で審議委員務める

日銀の現総裁の黒田東彦氏は、10年間その職にある。岸田氏が後任として植田氏を提案すると先週報じられると、投資家たちに驚きが広がった。

植田氏は学者だが、日銀と無縁ではない。1998~2005年には日銀の審議委員を務めた。

日銀が1999年に経済活性化のために異例のゼロ金利政策を導入したときには、日銀に在籍していた。

しかし、国債利回りに上限を設けるという賛否の分かれる政策を日銀が実施したときには、日銀を離れていた。

イールドカーブ・コントロール(YCC)と呼ばれるこの政策は、一般消費者には直接的な影響はほとんどない。一方で、投資家は投資リターンが縮小したことから、この政策をやめるよう日銀に圧力をかけてきた。

植田氏の評判は

金融市場は先週、植田氏が次期総裁に提案されるとの報道を歓迎した。他の候補者よりもYCCを廃止させる可能性が高いとみられたからだ。

日銀の次期総裁が直面する課題はかなり困難だが、植田氏に関しては、経済情勢の変化に適応できる実利主義者との評価もある。

経済学者のイェスパー・コール氏は植田氏について、「教義ではなく科学を重視する人物であり、自らの仮説を現実世界で検証することを恐れない、深遠かつ創造的な思想家だ」と報告書で書いている。

「彼は思慮深く、短絡的な行動は取らない。急いで大勝利を収めようとはせず、最適で持続可能な政策の枠組みを設計しようとするだろう」

柳下美恵