画期的なニュース:タンパク質を応用した視覚ニューロン素子が明暗錯視の検出に成功

画期的なニュース:タンパク質を応用した視覚ニューロン素子が明暗錯視の検出に成功

岡田佳子特命教授と深澤光氏が開発した視覚ニューロン素子が、人間の視覚と同様の錯覚を生む機能を備え、画像の輪郭検出や明暗錯視の実現に成功した。この素子は、地球最古の生物である「高度好塩菌」の細胞膜から取り出された光受容タンパク質「バクテリオロドプシン」を使用し、タンパク質の特性だけで輪郭部分での明暗錯視を再現することに成功した。

この成果は、米国化学会の論文誌Nano Lettersに2023年12月4日にオンラインで掲載された。視細胞は光を感知する際、隣接した細胞を抑制する「側抑制」と呼ばれる仕組みを持っており、この側抑制により、物体の輪郭を強調し認識する能力がある。しかし、人工視覚ニューロン素子を実現するには、複雑な回路構成や高度なプログラミングが必要であり、これまでに省エネルギーや小型化の要求を満たすことができなかった。そこで注目されたのが「バクテリオロドプシン」であり、本研究ではこのタンパク質を利用して視覚ニューロン素子を構築し、明暗錯視の検出に成功した。

視覚ニューロン素子は、バクテリオロドプシンのみを使用し、網膜神経節細胞の応答を再現した。これにより、入力画像の走査だけで画像の輪郭を検出し、明暗錯視を実証した。網膜神経節細胞の受容野は、中心と周辺領域が同心円状に配置された構造を持っており、この構造をもとに2値化DOGフィルターを構築し、電子部品を一切使用せずに視覚ニューロン素子を実現した。

柳下美恵